下請代金支払遅延等防止法(下請法)とは・・・
親事業者と下請事業者の受注発注に関する取引が日々活発に行われれる中で、両者の間で様々なトラブルが生じることがあります。
そこで、下請事業者の利益を保護する観点に立ち、独占禁止法の違反事件処理手続きとは別の簡易な手続きが必要であるとの考えから、独占禁止法の補完法として制定されたのが
下請代金支払遅延等防止法(下請法)なのです。
下請法は、取引当事者の資本金区分と取引内容で適用対象を明確にするとともに、親事業者の優越的地位の濫用行為及び違反行為の排除措置の内容を具体的に法定するなど、独占禁止法に比較して簡易な手続きを規定し、迅速かつ効果的に下請事業者の保護を図ろうとするものです。
親事業者の4つの義務- 書面の交付義務(第3条)
- 書類等の作成・保存義務(第5条)
- 下請代金の支払期日を定める義務(第2条の2)
- 遅延利息の支払義務(第4条の2)
親事業者の禁止事項- 受領拒否の禁止(第4条第1項第1号)
- 下請代金の支払遅延の禁止(第4条第1項第2号)
- 下請代金の減額の禁止(第4条第1項第3号)
- 返品の禁止(第4条第1項第4号)
- 買いたたきの禁止(第4条第1項第5号)
- 購入強制・利用強制の禁止(第4条第1項第6号)
- 報復措置の禁止(第4条第1項第67号)
- 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(第4条第2項第1号)
- 割引困難な手形の交付の禁止(第4条第2項第2号)
- 不当な経済上の利益の提供要請の禁止(第4条第2項第3号)
- 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(第4条第2項第4号)
親事業者の遵守すべき事項下請取引を行うに当たって、親事業者は、下請代金支払遅延等防止法(以下「法」という。)に従い、下記事項を遵守しなければならない。
記
1. 書面(注文書)の交付及び書類の作成・保存義務
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、直ちに、給付の内容、下請代金の額、支払期日、支払方法その他の事項を記載した書面を下請事業者に交付するとともに、下請事業者の給付、給付の受領、下請代金の支払その他の事項について記載し又は記録した書類又は電磁的記録を作成し、これを2年間保存しなければならない。(法第3条,第5 条) 2. 下請代金の支払期日を定める義務
下請代金の支払期日は、親事業者が下請事業者の給付の内容については検査するかどうかを問わず、親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。(法第2条の2)
なお、下請代金の支払期日が定められなかったときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日が、前項の規定に違反して下請代金の支払期限が定められたときは親事業者が下請事業者の給付を受領した日から起算して60日を経過した日の前日が下請代金の支払期日を定められたものとみなす。
3. 受領拒否の禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付の受領を拒むことをしてはならない。(法第4条第1項第1号)
4. 下請代金の支払遅延の禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、下請代金をその支払期日の経過後なお支払わないことをしてはならない。(法第4条第1項第2号)
5. 下請代金の減額の禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずることをしてはならない。 (法第4条第1項第3号)
6. 返品の禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付を受領した後、下請事業者にその給付に係る物を引き取らせることをしてはならない。 (法第4条第1項第4号)
7. 買いたたきの禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、下請事業者の給付と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めることはしてはならない。(法第4条第1項第5号)
8. 購入強制・利用強制の禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、下請事業者の給付の内容を均質にし又はその改善を図るため必要がある場合その他正当な理由がある場合を除き、自己の指定する物を強制して購入させ、又は役務を強制して利用させることをしてはならない。(法第4条第1項第6号)
9. 報復措置の禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、親事業者が第1号若しくは第2号に掲げる行為をしている場合若しくは第3号から前号までに掲げる行為をした場合又は親事業者について次項各号の一に該当する事実があると認められる場合に下請事業者が公正取引委員会又は中小企業庁長官に対しその事実を知らせたことを理由として、取引の数量を減じ、取引を停止し、その他不利益な取扱いをすることをしてはならない。(法第4条第1項第7号)
10. 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、自己に対する給付に必要な半製品、部品、付属品又は原材料を自己から購入させた場合に、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に、支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し、又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。(法第4条第2項第1号)
11. 割引困難な手形の交付の禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、下請代金の支払につき、当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付することによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。(法第4条第2項第2号)手形期間が、繊維業にあっては90日、その他の下請取引にあっては120日を超える場合は、割引困難な手形に該当するおそれがある。(通達 41公取下第169号及び233号、41企庁第339号及び467号)
12. 不当な経済上の利益の提供要請の禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。(第4条第2項第3号)13. 不当な給付内容の変更・やり直しの禁止
親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請事業者の給付内容を変更させ、又は下請事業者の給付を受領した後に給付をやり直させることによって、下請事業者の利益を不当に害してはならない。(第4条第2項第4号)
公正取引委員会事務総局 | 経済取引局取引部企業取引課 | 03-3581-3373 http://www.jftc.go.jp |
公正取引委員会 中部事務所 | 下請課 | 052-961-9424 |
関東経済産業局 | 産業振興部中小企業課 | 048-600-0325 |
中部経済産業局 | 産業振興部中小企業課 | 052-951-2748 |
(公財)静岡県産業振興財団 | 取引支援チーム | 054-273-4433 |
下請法クイズ
公正取引委員会は、下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)を運用することにより、親事業者と下請事業者との間の取引の公正化を図ることに努めています。
さて、公正取引委員会が出題する恒例の下請法クイズ。あなたは分かりますか。
【問題1】下請法上の「製造委託」に該当するのものはどちらですか。
ア. | 製薬会社が、市販薬の外箱の印刷・製造を発注した。 |
イ. | メーカーが製品の発送、運搬業務を外注した。 |
【問題2】電子受発注について問題とならないのはどちらですか。
ア. | 電子メールによる発注を行い、送信後に下請事業者が電子メールを受信していることを確認している。 |
イ. | 下請事業者にウェッブのホームページを閲覧させているが、ホームページにはダウンロード機能を持たせていない。 |
【間題3】下請代金の支払について問題とならないのはどちらですか。
ア. | 4月1日以降の発注分に適用することを前提に単価の引き下げ交渉をしてきたが、5月中旬になって下請事業者との間で合意したので、改めて下請事業者の了解を得て、5月1日発注分から新単価を適用した。 |
イ. | 下請事業者から納品を受けたが、受入検査で一部の物品を不良品のため返品したので、その分について下請代金を減じる場合。 |
答え
【問題1】 答えは 「ア」
【解説】 | 事業者が製造又は販売している物品の付属品を、仕様等を指定して外注する場合には、下請法上の製造委託に該当します。設問アの場合、製薬会社は、自社が製造又は販売している市販薬の付属品としての外箱を外注しているので製造委託に該当します。 一方、完成品の運搬業務は、役務の委託であり、製造委託には該当しません。 |
【問題2】 答えは 「ア」
【解説】 | 電子メールにより電子受発注を行う場合は、電子メールを送信しただけではなく、少なくとも下請事業者が当該メールを受信していることが必要となります。また、ホームページを利用する場合は、閲覧させる内容について、別途電子メール等で送信するか、ホームページにダウンロード機能を持たせるなど、下請事業者のファイルに記録できる方策を採らなければなりません。 |
【間題3】 答えは 「イ」
【解説】 | 下請代金の額は、不良品等の下請事業者に責任のある納品分については、発注後にその分を減額して支払うことを認めています。 また、下請事業者との間で単価の引き下げについて合意した場合には、合意日以降の発注分から新単価を適用しなければならず、5月中旬に単価引き下げについて合意したのであれば、合意日以降の発注分から新単価を適用しなければなりません。したがって、設問アの場合、5月1日から5月中旬の合意日前までに発注した分については下請代金の減額として下請法上問題となります。 |
◆公正取引委員会・中小企業庁では、毎年11月を「下請取引適正化月間」とし、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の普及・啓発を集中的に実施しています。
◆静岡県内でも、7月に「取引適正化推進講習会」の実施を計画しています。 |
下請法、下請取引に関するこ相談・ご意見については、
下記の担当課にお寄せ下さい。
公正取引委員会事務総局 中部事務所 下請課
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